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H1

水素の基礎

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水素の歴史

1766年イギリス人のキャベンディッシュによって、水素は金属に酸を作用させたとき発生する気体から発見され、「燃える気体」と名づけられたが、1781年フランス人のラボアジェは、「空気中で燃焼すれば水を生ずる」ことから「水をつくる」というギリシャ語にちなんでHydrogenと命名した。

水素が初めて大量に用いられたのは気球であり、1783年フランス人のシャルルによって試みられたが、この水素は鉄に希硫酸を作用させてつくられた。1885年ごろから、水を電気分解して工業的に水素を製造する装置が開発され始めた。我が国でも大正年間に入って大型水素製造装置による純度の高い水素が製造され、アンモニア合成用の原料として用いられた。これと並行して石炭、コークスなどをガス化して水素などを主成分とするガスを製造することも開始され、アンモニア合成用原料ガス、都市ガスなどに用いられた。

現在では石油化学工業、脱硫、クリーンエネルギー等多方面で利用されている。

(高圧ガス取扱ガイドブック(圧縮水素編)(第3次改訂版) 1.2 水素の歴史 より)

水素の基礎物性

性質 水素(軽水素) 重水素
分子式
分子量
H2
  2.02
D2
  4.03
比重 (空気=1とする。)
密度 (kg/m3) (0℃、0.1013MPa)
0.07
0.09
0.1390
0.18
臨界温度 (℃)
臨界圧力 (MPa)
臨界密度 (g/L)
-240
  1.30
  31.6
-234.8
  1.67
  67.3
沸点 (℃)
蒸発熱 (J/g)
融解熱 (J/g)
-252.8
477.2 (-259℃)
  58.3 (-259℃)
-249.5

 
比熱容量 (比熱)
 定圧比熱容量 (定圧比熱) [kJ/(kg・K)]
 定容比熱容量 (定容比熱) [kJ/(kg・K)]

14.4 (0~200℃)
10.3 (0~200℃)
 
総発熱量 (MJ/m3)
真発熱量 (MJ/m3)
12.8
10.8
 
発火温度 (℃)            空気中
                 酸素中
>500
>450
 
火炎温度 (℃)            空気中
                 酸素中
2045 (H2 31.6%)
2660 (H2 78%)
爆発範囲 (vol%)          空気中
(常温、0.1013MPa)           酸素中
4~75
4~94
5~75
5~95
水に対する溶解度
 (水1Lに溶解する水素をcm3の単位で表す。
 圧力は0.1013MPaである。)
温度℃    溶解量cm3
0       21.4
20       18.2
40       16.4

 

出典:高圧ガス取扱ガイドブック(圧縮水素編)第3次改訂版

水素侵食・水素脆化

高圧ガス設備において水素を安全に使用するためには、設備を運転する圧力、温度等の水素環境において水素侵食及び水素脆化に適した材料の選択が重要となります。

水素侵食

高温高圧の水素ガス環境では、水素が鋼中に侵入し、鋼中の炭化物(セメンタイト)と反応して鋼を脱炭させるとともに、メタンガスを生成します。

Fe3C + 4H → 3Fe + CH4

メタンガスは結晶粒界に蓄積し、その圧力が高いため多数の微細なき裂を生じます。この結果鋼の機械的性質は低下します。この現象が水素侵食(hydrogen attack)です。

Cr、Mo、Nb、Ti、Vなどを添加するとより安定な炭化物を作るため、耐水素侵食性は向上します。実用的には0.5%Mo鋼やCr-Mo鋼が使用されています。米国のAPI(米国石油学会)が炭素鋼およびCr-Mo鋼の損傷事例を集積し、水素分圧と温度について使用限界を定めた図がネルソン線図(Nelson chart)です。

水素分圧29.4MPa、温度873Kの雰囲気下で900ks曝露された低炭素鋼の粒界破面上のメタン気泡跡

水素分圧29.4MPa、温度873Kの雰囲気下で900ks曝露された
低炭素鋼の粒界破面上のメタン気泡跡

 

水素侵食の事例(水素侵食を受けた炭素鋼の破面)
出典:今中拓一,田中智夫:日本金属学会会報,21(1982),p.551.

水素脆化

水素脆化は、水素により材料の見かけ上の靱性が低下する現象です。鋼が低温において靱性が低下する低温脆化とは異なり、時間依存型の現象であり、劈開破面を生じないことから低温脆化における脆化とは本質的には異なる事象です。

圧縮水素スタンドでは、水素脆化しない、あるいは水素脆化の影響が少ない材料が選定され使用されています。材料の選定方法としては、高圧水素環境において、SSRT(Slow Strain Rate Test)、疲労試験、疲労き裂進展試験等において水素の影響がない、あるいは水素の影響が少ないことを確認しています。

水素の取り扱い

水素の取り扱い(供給及び消費)については、高圧ガス保安協会が発行しております「高圧ガス取扱ガイドブック(圧縮水素編)(第3次改訂版)」をご参照ください。
 

「高圧ガス取扱ガイドブック(圧縮水素編)(第3次改訂版)」に記載されている内容は以下のとおりです。

高圧ガス取扱ガイドブック 圧縮水素編(第3次改訂版) 目次

水素の利用例

水素は、利用時に二酸化炭素を排出しないことから、脱炭素社会の実現に向けて、燃料電池バスや水素ステーションなど様々なところで利用されています。
 

水素エネルギーの普及例:燃料電池バス

水素エネルギーの普及例:燃料電池バス


九州大学水素ステーション

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