1.海外事故情報*1
2022年6月27日、ヨルダン・アカバ港において、液化塩素の容器を、クレーンを用いて船へ積み込む作業中に容器が落下し、液化塩素が漏えいする事故が発生しました。被害状況、事故原因などは、次のように報道されています。
- 少なくとも13名が死亡し、265名が負傷した。
- クレーンの故障 (a crane malfunction)が原因であり、容器を運ぶ鉄のロープが切れた( an "iron rope" carrying the container "broke" )という証言がある。
- ヨルダンの首相は、内務大臣に事故調査を指揮するよう指示し、その調査の結果、次が判明した。
- アカバ港の運営管理者、上級職員などは、重要な安全に関する訓練を受けていない職員に業務を委任していた。
- 玉掛用具(ワイヤーロープ)の定格荷重は、8.5トンであり、液化塩素の容器の重量(約25トン)に対して、適合性が欠如していた。
2.日本の関連法規
- 高圧ガス容器を国内で陸上輸送をする場合、ガスの種類により、高圧ガス保安法、毒劇法、消防法、道路法に従った容器、積載方法で輸送する必要があります。
- 高圧ガス容器を国内で海上輸送する場合、海洋汚染防止法、船舶安全法に従った容器、積載法で輸送する必要があります。
- 港にクレーンを設置する場合、港湾法に基づき、港湾管理者の許可を得る必要があります。また、設置場所にかかわらず、一定能力以上のクレーンを設置する場合、労働安全衛生法に基づき、都道府県労働局長の許可を得る必要があります。
- 一定能力以上のクレーンを運転する場合、労働安全衛生法に基づき、資格を有する者が運転する必要があります。
- クレーンの玉掛用具(ワイヤーロープ、フック、リングなど)は、労働安全衛生法に基づき、安全性能を有する玉掛用具を用い、使用前は点検をする必要があります。
3.日本のクレーン災害
日本でも、クレーンの吊り荷が落下する事故は発生しています。その中には、吊り荷の落下による死亡事故もあります。詳細は、厚生労働省の労働災害事例
*2、一般社団法人日本クレーン協会の災害事例
*3などをご確認ください。
4.高圧ガス事故事例
高圧ガス事故事例データベースにも、高圧ガス容器を移動するため、クレーンを用いて吊り上げたとき、容器が落下した事故が登録されています。事故の概要を、表に示します。
表 高圧ガス事故事例
5.注意喚起
高圧ガス容器は、落下衝撃を受けることを想定していません(一部の容器を除く)。
したがって、高圧ガス容器を移動する場合は、高圧ガス保安法を順守し、転落、転倒などによる衝撃およびバルブの損傷を防止する措置を確実に講じてください。また、粗暴な取扱いをしないでください。
高圧ガス容器を移動するため、クレーンを用いる場合は、労働安全衛生法を順守し、安全性能を有する玉掛用具を用い、使用前は点検を確実に行ってください。
(参考)
*1 この事故については、複数の報道機関が、事故発生時の映像を交えて報道しており、WEB検索でも、事故発生時の映像を確認できますので、ご覧いただくことをお勧めします。
検索ワードの例:「ヨルダン」、「アカバ港」、「塩素」、「有毒ガス」、「漏えい事故」、「事故」
*2 厚生労働省、「職場の安全サイト 労働災害事例」、<https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/sai/saigai_index.html>
*3 一般社団法人日本クレーン協会、<http://www.cranenet.or.jp/index.html>
ご不明な点がございましたら、以下までお問い合わせください。
高圧ガス保安協会 保安技術部門
TEL:03-3436-6103