[HTML]
【全】背景色
 
【全】ヘッダーリンク(未ログイン)
H1

平成15年(2003年)に発生した冷凍空調施設における事故について | 高圧ガス保安協会

コンテンツ
   
  平成15年に発生した冷凍空調施設における事故(経済産業省に報告のあった事故)は11件で、フルオロカーボン冷凍施設に係るものが1件、アンモニア冷凍施設に係るものが10件(うち、5件は自然災害(三陸南地震〈1〉、十勝沖地震〈4〉)、1件は火災によるもの)であった。これらの事故を災害現象別にみると、漏洩等によるものが6件、破裂等によるもの4件、火災によるものが1件であった。以下に、事故の概要を紹介します。

(その1) 工事ミスによるアンモニア漏洩(電動ノコで配管切断)

   
   
(1)発生日時: 15年2月9日 13:30頃
(2)発生場所: 兵庫県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 77.1トン/日
(3)許可年 : 昭和37年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 工事中
(6)事故概要: 冷蔵倉庫の1階通路の上部(高さ4mの位置)に設置されているアンモニア給液配管(天井ヘアピンコイルに繋がる配管)の手動弁の取替工事において、アンモニアの抜き取り措置を実施しておいた配管を切断するところを、誤って、ヘアピンコイル側のバイパス液配管(15A)を電動ノコギリで切断した。このため、アンモニアが噴出し通路及び冷蔵庫内に充満した。消防の応援を得て、配管に木栓を打ち、テープ止め等応急措置を行った後、放水による洗浄作業後、大気放出を開始した。この事故は、7系統の給液配管の手動弁の交換作業のうち、第6系統目で発生したものである。第1系統から第5系統までの手動弁は、アンモニアを抜き取り後、正規箇所の配管が切断され手動弁の交換が行われている。事故原因は、(1)第6系統の配管が、第1~第5系統の配管構成とは異なっていた(アンモニアの抜き取り措置を実施してあるはずの配管と、アンモニア液が入っている、ヘアピンコイル側のバイパス配管とが逆になっていた。)こと、(2)また、作業監督者が切断箇所へマーキングをせずに、指差指示により作業員に切断指示を行ったこと、(3)作業員が誤認(第1~第5系統の配管構成と同じと思い込み)して液配管を切断したものであった。 なお、この事故で、周辺住民が一時避難したものの、幸いにして人的被害はなかった模様である。
工事ミスによるアンモニア漏洩

(その2) 冷媒補充用高圧ホースの破裂

   
 
(1)発生日時: 15年5月7日 10:15頃
(2)発生場所: 大阪府下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 59トン/日
(3)許可年 : 昭和52年
(4)災害現象: 破裂等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: ジュースを冷やす冷凍装置の冷却能力が低下したため、アンモニアを補充することとした。補充のため、サービスバルブとアンモニア容器を高圧ホースで接続し、冷凍装置の低圧側バルブを半回転開けてエアー抜きを実施した。次いで、アンモニア容器(60kg)のバルブを半回転させ漏洩のないことを確認し、更にバルブを開けたところ、高圧ホースが破裂しアンモニアが噴出した。事故原因は、高圧ホースの劣化と検査不良によるものであった。この事故によるアンモニア漏洩量は、30kgと推定されている。なお、噴出したアンモニアは、建物内に充満したものの、幸いにして外部への影響はなかった模様である。

(その3) 配管のき裂(地震)

   
 
(1)発生日時: 15年5月26日 18:24頃
(2)発生場所: 岩手県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 95.2トン/日
(3)許可年 : 昭和58年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 停止中
(6)事故概要: 三陸南地震(震度6弱、マグニチュード7.0)により、水産加工会社の冷凍設備(魚の冷凍用)に横ずれが起こり、配管(4箇所)にき裂が生じアンモニアが漏洩した。このため、送液バルブを閉め、圧縮機を運転し配管内のガスを回収するとともに、漏えいしたアンモニアを酢酸を用い中和処理を開始した。しかし、復旧作業の過程において、工場内に充満したアンモニアガスを、排気ダクト(直径30cm、3本)を用いて当該工場外に強制排出したところ、応急処置作業に従事した溶接技術者1名と周辺住民4名がのど等に痛みを訴え、病院で治療を受けた。この事故によるアンモニア漏洩量は、800kgと推定されている。

(その4) 異形ソケットのき裂による漏洩

   
 
(1)発生日時: 15年8月5日 11:30頃
(2)発生場所: 青森県下のフルオロカーボン(R22)冷凍事業所
冷凍能力 27.2トン/日
(3)許可年 : 平成6年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 当時、作業員は水産加工場内の5つの生産ラインで冷凍食品や缶詰用として、トンネルフリーザで製品を凍結させる作業をしていた。16:40頃、水産加工場内で作業をしていた118名の作業員中2名の作業員が具合が悪いとぐったりした状態となり、作業場外へ運び出した。他の作業員も、それぞれ異臭を感じ、喉の痛み、頭痛などを訴えたため、ガス漏れに気付き、作業員全員を作業場外に避難させ病院に搬送するとともに、冷凍機の運転も停止した。17:30頃、ガス漏れ箇所を調査したところ、4基あるトンネルフリーザのうちの1基の給液配管の電磁弁と膨張弁の付近(天井裏)に相当量の霜が付着しているのを確認した。漏れ箇所を特定するため付近の防熱配管の保冷材を剥離したが、漏れ箇所が発見できなかったため、付近の配管に異常がないか、手で力を加えたところ、き裂を生じていた給液配管の電磁弁と膨張弁の間の異形ソケット(22.2φ×15.8φ)の中央(異形部)が切断した模様である。このため、直ちに、切断箇所の前後バルブを閉止した。この事故は、ガス漏れ箇所が、作業場のトンネルフリーザの真上の天井裏であったため、発見に至るまでに約1時間を要した(冷媒の推定漏洩量:42.5kg)。なお、病院に運ばれた39名の作業員のうち、2名は酸欠状態で意識不明であったが、まもなく回復した模様。き裂を生じた異形ソケットは、1年前(平成14年7月10日)に交換したものであった。
異形ソケットの亀裂による漏洩

(その5) 安全弁の作動(火災)

   
 
(1)発生日時: 15年9月23日 23:30頃
(2)発生場所: 青森県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 25.8トン/日
(3)許可年 : 昭和50年
(4)災害現象: 火災
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 21時10分頃、冷蔵倉庫に隣接する飲食店から出火。炎上した木造2階建て店舗が冷蔵倉庫に崩壊・延焼したため電気が遮断された。この間、冷蔵倉庫の夜間当直員は、冷凍保安責任者に連絡後、停電中ではあったが冷凍機(2台)の吐出弁と吸入弁を閉じ避難した。火は冷蔵倉庫の天井防熱等を焼き尽くし、機械室内の配管防熱の一部を焼いた。また、冷蔵庫内クーラーの一部配管等が火炎に炙られたため異常高圧となり安全弁が作動し屋外の除害設備内にアンモニアが噴出した。この事故による安全弁からのアンモニアの噴出量は、20kgと推定されている。
なお、除害槽周辺で、アンモニア臭がたちこめたが、大事には至らなかった模様である。

(その6) 安全弁の作動

   
 
(1)発生日時: 15年10月14日 6:4頃
(2)発生場所: 長崎県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 85.3トン/日
(3)許可年 : 昭和61年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 4時50分頃、冷蔵用冷凍機(55KW)および製氷用冷凍機(75KW)を起動運転中異常高圧が生じ、前者は高圧遮断器が作動し運転が自動停止したが、後者は高圧遮断器が作動しなかったため安全弁が作動した。 しかし安全弁の放出管に用いられていた継手(LAソケット)が振動により緩んでいたため外れてしまい、アンモニアが漏洩した。事故原因は、高圧受液器から冷蔵室に送る液元弁を『閉止』したまま冷凍機を起動したため、高圧受液器が満液になり異常高圧を生じたものであった。なお事故後、高圧遮断装置の作動試験をした結果、1.55MPaであった。
この事故によるアンモニア漏洩量は、1kg以下と推定されている。

(その7) 配管等の損傷(地震)

   
 
(1)発生日時: 15年9月26日 4:50頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 298.56トン/日
(3)許可年 : 昭和58年
(4)災害現象: 破裂等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 十勝沖地震(震度6弱、マグニチュード8.0)の発生直後、凍結室からアンモニア臭がした。冷凍保安責任者が損傷箇所を調査し、サクションバルブ及びサクション配管の溶接部等が損傷(5ヶ所)しているのを発見した。このため、直ちに、送液バルブを閉め損傷箇所を修復した。
この事故によるアンモニア漏洩量は、30kgと推定されている。

(その8) 配管の損傷(地震)

   
 
(1)発生日時: 15年9月26日 4:50頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 95.7トン/日
(3)許可年 : 昭和47年
(4)災害現象: 破裂等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 十勝沖地震の発生直後、冷凍保安責任者が機械室の内外を点検したが、異常は無かったので、冷蔵室の点検のため扉の前まで行ったところ、若干のアンモニア臭を感知した。このため、直ちに、送液バルブを閉め、圧縮機の運転を行い、低圧側の圧力上昇を押さえ漏洩を最小限にとどめた。事故原因は、凍結室のユニットクーラーへの送液管に、荷物の一部が崩れて、液管に当たったため、液管の溶接部にき裂が生じたものと推定されている。

(その9) 配管の損傷(地震)

   
 
(1)発生日時: 15年9月26日 4:50頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 92.45トン/日
(3)許可年 : 昭和47年
(4)災害現象: 破裂等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 十勝沖地震の発生直後、アンモニア臭を感知した。直ちに、送液バルブを閉め調査したところ、冷凍設備の配管に損傷が見つかった。このため、設備会社に損傷箇所の修復を依頼した。

(その10) 配管の損傷(地震)

   
 
(1)発生日時: 15年9月26日 4:50頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 35.78トン/日
(3)許可年 : 昭和42年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 停止中
(6)事故概要: 十勝沖地震の発生直後、冷凍保安責任者が水産加工場の点検を実施した。機械室等には異常は無かったので、冷蔵庫の準備室を点検したところ、荷崩れがあり、若干のアンモニア臭を感知した。30分後、送電が再開されたと同時に、圧縮機の運転を行い、低圧側の圧力上昇を押さえ漏洩を最小限にとどめた。なお当該事業所の送液方式は、強制循環方式であるが、前日に運転を停止しており、その際に蒸発器から冷媒を回収していること、また、地震当日、送電が再開後、直ちに、圧縮機の運転を開始し低圧部の冷媒を回収したこともあって、漏洩量は最小限に押さえられた。また、冷蔵庫内に滞留したアンモニアは、消防署から借りた排風器で排気処理を実施した。事故原因は、天井ヘアピンコイルと送液管とを接続するフランジ(フランジと送液管の接続はネジ込み接続)が地震で揺られ、当該フランジと送液管との接続部のネジ山に変形が生じたためと推定されている。

(その11) 圧力計交換時の漏洩(バルブの開閉判断の誤り)

   
 
(1)発生日時: 15年12月21日 13:15頃
(2)発生場所: 兵庫県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 375.40トン/日
(3)許可年 : 昭和43年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 工事中
(6)事故概要: アイスクリーム製造室内においてアンモニア冷凍設備の改造工事中、圧力計の針が外れていたので、作業者が独自の判断で圧力計の交換作業をしようとして、判断を誤り元弁が開いた状態で、圧力計を取外してしまった。その瞬間、アンモニアが噴出したため、咄嗟に手で押さえてしまい両手に凍傷を負った。当該作業者は、現場を離れ関係者に報告した。報告を受けた関係者が現場に行こうとしたが、ガス漏れがひどく20m手前までしか近づくことができず、工場作業者への避難放送を行った。また消火栓より放水し、アンモニアを吸収させようとしたがガス臭がひどく作業が継続できなかった。その後、冷凍機を運転し、圧力を下げる措置(0.3MPa以下)を行い、圧力計の元弁を閉止し、ボイラーを起動して製造室内に蒸気を放出しアンモニアを吸収した。事故原因は、圧力計の元弁を閉めようとしたが、ハンドルが固かったので閉まっているものと思い込み、元バルブが開いた状態で、圧力計を取り外してしまったためであった。

平成15年に発生した冷凍空調施設における事故は11件で、フルオロカーボン冷凍施設におけるものが1件、アンモニア冷凍施設におけるものが10件であった。
これらの事故から次のような教訓が得られるのではないでしょうか。
なお、地震等の自然災害や火災などの緊急時への対応は、定められた基準に従って対処できるよう日頃の教育訓練が重要です。このたびの地震災害に関する報告をみると、揺れがおさまった後、速やかに冷凍設備の点検が行われ、漏れ箇所が発見された場合には、漏洩を極力少なくするなど状況に応じ対処されている模様であり、日頃の訓練が活かされていることを実感するものであった。

(その1の事故への対応)
冷凍設備の改修工事に際しては、工事計画書に従い、十分な管理・監督の下に実施することが重要です。また、配管の切断は、図面等と照合し、切断箇所にマーキングを行う等の措置を講じてから行うことが重要です。

(その2の事故への対応)
冷媒補充用高圧ホースは、使用に際して十分に検査を行い劣化していないことを確認してから用いることが重要です。また、高圧ホースは、メーカーの保証期間内のものを使用することが望まれます。万一に備え、保護具の装着がスムーズに行えるよう日頃の訓練が重要です。

(その6の事故への対応)
安全弁の放出管に起因する事故が時々見受けられます。除害水槽の水位の確認とともに、放出管自体の維持管理が望まれます。放出管の点検は、接続部のガタつきや腐食を重点に行うことが望まれます。

(その11の事故への対応)
圧力計の元弁を閉めようとしたが、ハンドルが固かったので閉まっているものと思い込み、元バルブが開いた状態で、圧力計を取り外してしまった。冷凍設備の改修工事に際しては、工事計画書に従い、十分な管理・監督の下に実施することが重要です。また今回の工事範囲外であった、針がはずれている圧力計の交換作業を作業者が独自の判断で行い、その際に、圧力計の元弁のハンドルが固かったので閉まっているものと思い込んでしまったものであり、工事内容の事前打合せの徹底が望まれます。

お問合わせ先

   
 
高圧ガス部 冷凍空調課
TEL 03-3436-6103 FAX 03-3438-4163
メールフォーム

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの内容はわかりやすかったですか?*
どのような点で、そのように感じましたか? 当てはまるものを一つお選びください。*