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平成16年(2004年)に発生した冷凍空調施設における事故について

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  平成16年に発生した冷凍空調施設における事故(経済産業省に報告のあった事故)は4件で、いずれもアンモニア冷凍施設に係るものであった。これらの事故を災害現象別にみると、漏洩等によるものが3件、破裂等によるもの1件であった。うち、安全弁の放出管に関わる事故が2件を占めていた。以下に、事故の概要を紹介します。

(その1) 除害水槽付近でのアンモニアの拡散

   
 
(1)発生日時: 16年8月5日 19:15頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 296.83トン/日
(3)許可年 : 昭和41年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 8月5日、7:30AM頃、付近住民から消防署に「異臭」の通報があり、警察及び消防が冷凍事業所に到着した。冷凍事業所は、冷凍設備のサービス会社に連絡し、冷凍設備の点検・調査を依頼した。調査の結果、除害槽からアンモニアが拡散していたため、各安全弁を点検したところ、使用していなかった処理室内に設置された低圧受液器の安全弁が作動状態のままとなっていた。このため、直ちに、当該安全弁の元バルブ(20A)を閉止した。事故原因は、幾つかの要因が重なったためであるが、大別すると次の2つの要因といえる。第1の要因は、数日の外気温の上昇により、処理室内に設置された低圧受液器内の圧力が上昇し、設定圧力を超えたために安全弁が作動したが、圧力が吹止圧力まで低下しても作動状態のままとなった。第2の要因は、鋼製の除害水槽が腐食し、穴が開いていたため、除害設備内の水が不足しアンモニアが十分に溶解されず、アンモニアが付近に拡散したためであった。

(その2) 安全弁放出管からのアンモニアの漏洩

   
 
(1)発生日時: 16年8月15日 3:45頃
(2)発生場所: 宮城県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 307.7トン/日
(3)許可年 : 昭和37年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 8月15日、3:45AM頃、アンモニア臭に気づいた付近住民から消防署に通報があり、消防が食品工場に到着した。また警備会社もアンモニア検知警報設備が作動信号を受信し、食品工場に到着した。食品工場の機械担当者と警備会社は、直ちに、冷凍保安責任者と冷凍設備業者に連絡し、冷凍設備の点検・調査を実施した。調査の結果、2階屋上設置のエバコン(No.2)の安全弁が作動し、アンモニアが除害水槽に放出されたが、除害水槽に入る手前の放出管が腐食していたため、当該腐食部よりアンモニアが噴出したことがわかった。事故原因は、3基の高圧受液器うちのNo.2の高圧受液器の出口送液管に設置されている電磁弁(常時開)の1個が、何らかの影響で閉止し当該高圧受液器から蒸発器への給液が停止した。このため、高圧側(高圧受液器及びエバコン)の圧力が上昇し、エバコン(No.2)の安全弁が作動したものと推定されている。なお、圧縮機は、高圧遮断装置が作動したため停止した。この事故によるアンモニア漏洩量は、5~10kgと推定されている。

(その3) 吐出配管のエルボの破損

   
 
(1)発生日時: 16年8月26日 11:00頃
(2)発生場所: 秋田県下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力 44.2トン/日
(3)許可年 : 昭和45年(旧法)
(4)届出年 : 平成9年
(5)災害現象: 破裂・破壊等
(6)取扱状態: 運転中
(7)事故概要: 7:30AM頃、冷蔵庫内の霜取り作業のため一旦運転を停止した後、10時40分より運転を再開したところ、圧縮機3台のうちの1台の吐出配管の鋳鉄製エルボの屈曲部が破損(約2×3cm(穴状に吹き飛んだ))し、アンモニアが噴出した。冷凍機械室に隣接する作業場で、作業をしていた作業員が“ボン”という音に気づき、機械室を覗いたところ、白煙を上げアンモニアガスが吹き出していたため消防署に通報した。消防及び設備業者が到着し、発災から約40分後、設備業者によってバルブが閉止され漏洩を止めたが、この間に約30kgのアンモニアが漏洩した。事故原因は、設備の劣化によるものと推定されているが破損部分が発見されず詳細は不明である。なお、安全装置は、8月19日、20日に作動試験が実施され高圧遮断装置は15MPaに、安全弁は1.9MPaに設定されていることから、鋳鉄製エルボは1.5MPa未満の圧力で破損したものと考えられる。この事故で、救助作業車やポンプ車など6台が出動。事業所前の国道が約3時間通行止めとなり、付近の住民約200人が小学校などに約4時間避難した。また、隣接する水田では、噴出したアンモニアにより約3アールの稲穂や葉の一部が変色した模様である。

(その4) 液面コントロール電磁弁の故障

   
 
(1)発生日時: 16年12月19日 4:30頃
(2)発生場所: 北海道下のアンモニア冷凍事業所
冷凍能力  79.2トン/日
(3)許可年 : 昭和46年
(4)災害現象: 漏洩等
(5)取扱状態: 運転中
(6)事故概要: 冷凍器の運転中、低圧受液器の液面コントロール電磁弁が作動せず、アンモニア冷媒液が低圧受液器の液面上限ラインを超えた。このため、4台の圧縮機(No.2号機は停止中)のうちの3台にアンモニア液が流入した。液が流入した圧縮機から発する異常振動音に気づいた従業員は、直ちに、低圧受液器と圧縮機の間の弁を、No.1号機の圧縮機から順に閉止しようとしたが、No.3号機の圧縮機のクランクケースカバーの予備継手用キャップがはずれ、当該部分からアンモニアガスが漏えいした。事故原因は、低圧受液器の液面コントロール電磁弁の故障と推定されている。なお、No.3号機の圧縮機は、日常の振動によりクランクケースカバーの予備継手用キャップが緩んでいた模様である。

平成16年に発生した冷凍空調施設における事故は4件で、いずれもアンモニア冷凍施設に係るものであった。うち、安全弁の放出管に関わる事故が2件を占めた。ここ数年の事故をみると、放出管の腐食や接続箇所からのガス漏洩や除害水槽の水が不足する等により周辺へ影響を及ぼしている例が見受けられます。安全弁の放出管については、開口部の位置のみならず、放出管自体の維持管理も徹底するよう事業者への周知が望まれます。これらの事故から次のような教訓が得られるのではないでしょうか。

(その1の事故)
この事故は、何故、安全弁が作動したのか。また、その作動に至った要因は、どのようなことであったのかを知ることが、類似事故の再発を防止する上で重要である。この設備(昭和41年許可)の設計圧力(漏れ試験圧力)は0.8MPaであり、安全弁の作動圧力も1.0MPa以下に設定されていたと考えられる。また、低圧受液器の内圧は、周囲温度の上昇により0.9MPa程度となったことから安全弁が作動したものと推定される。即ち、旧基準による設備では、周囲温度に対応した安全弁の作動圧力に合致した設定になっていないケースも考えられる。

従って、実際の設定圧力を確認しておくことが望まれます。


【旧基準】
   安全弁の作動圧力=1.5MPa(耐圧試験圧力)×8/10=1.2MPa以下
          、かつ、気密試験圧力以下
   気密試験圧力=0.8MPa(漏れ試験圧力)×5/4=1.0MPa
   耐圧試験圧力=0.8MPa(漏れ試験圧力)×15/8=1.5MPa
なお、安全弁が吹き止まらなかった原因は、シート面に異物が付着したためと想定される。

(その2の事故)
この事故も、その1と同様、安全弁の作動要因を解明することが重要と考えます。

事故は、高圧受液器の出口送液管に設置されている電磁弁が閉止し当該高圧受液器から蒸発器への給液が停止したため、高圧側(高圧受液器及びエバコン)の圧力が上昇し、エバコン(No.2)の安全弁が作動した模様である。このことから、給液が停止したことにより、受液器内に冷媒液が過充填となり、かつ、温度が外気温まで上昇するにつれ、液膨張が起こり安全弁が作動したのではないかと想定される。従って、受液器に冷媒液が過充填とならないよう液面レベルの監視等の対策が望まれます。

(その3の事故)
この事故は、当該事業所において、異常時の措置訓練等が実施されていなかったため、発災後、漏洩を止めるまでに多くの時間を要し、周辺への影響を拡大したと指摘されています。緊急時への対応を、定められた基準に従って実施できるよう日頃からの教育訓練の必要性を改めて痛感します。冷凍事業所の保安担当者が、空気呼吸器等を装着し、冷凍機を停止させバルブ操作を行っていれば、これほどの影響は無かったものと思われます。

(その4の事故)
この事故は、低圧受液器の液面コントロール電磁弁の故障と推定されている。事故の再発防止のためには、定期的に液面センサーと液面コントロール電磁弁の機能確認を実施することが望まれます。No.3号機の圧縮機は、日常の振動によりクランクケースカバーの予備継手用キャップが緩んでいた模様であることから、併せて、クランクケースカバー等の日常点検も望まれます。

お問合わせ先

   
 
高圧ガス部 冷凍空調課
TEL 03-3436-6103 FAX 03-3438-4163
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